コールドプロセス

コールドプロセスでは温度管理が大事というイメージがありますが、私はちょっと違う解釈をしています。熱で鹸化反応を進めるホットプロセスと違い、コールドプロセスでは撹拌が鹸化反応を進める主な手段です。つまり大事なのは混ぜること。温度を細かくチェックするよりも、混ぜることでどのように生地が変化していくのかを目で見て確認することが大事だと思うのです。
混ぜるなんて当たり前、生地はトレースを見ればいいだけでは?と思うかもしれませんが、途中途中の生地の変化を確認することは、初めて石けん作りをする方がコールドプロセスを理解するためにも役立ちますし、経験者がオプション素材を入れるタイミングを見たり、デザイン石けんで生地を色付けしたり、流したりするタイミングを学ぶときにも役立ちます。

ここでは私が初心者向けのレッスンで取り入れている生地の変化を見る方法をご紹介します。(教室の教室の受講者のみなさんへ。石けん作りやお教室のアイディアとして、よかったら参考にしてくださいね。)
*画像の下にその説明がきます。

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コールドプロセスの始まりは苛性ソーダ水とオイル。40度とか45度に合わせましょうとよく言われていますが、何度という数字はあまりこだわらなくても構いません。要は、温もりがあると作りやすいですよ、ということです。オイルの入ったボウルや苛性ソーダ水の容器の外側に手をあててお風呂のような温もりがあるか確認してみましょう。

手を引っ込めるほど熱かったら待ちましょう。お風呂にしては熱いなと思ったらもう少し待ちましょう。ちょうどいいお湯加減なら混ぜ合わせます。お風呂にしてはぬるい、または冷たくなってしまった場合も混ぜ合わせます。混ぜることで鹸化反応を進めますから冷えてしまってもいいんです。少し温かい方が少しできるのが早い、それだけです。そもそも40度というのは、ホットプロセスの温度(60−80度)に比べたらほぼ冷たいも同じです。だからコールドプロセスなんです。熱すぎないように、それだけ注意しましょう。

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苛性ソーダ水をオイルへ入れました。普通は苛性ソーダ水を入れるそばから泡立て器で撹拌していきますが、ぜひ一度そのまま入れてみてください。混ぜる作り方を知るためには、混ぜない状態がどうなっているかを知るとよくわかります。

混ぜないと水と油に分かれています。オイルが上、苛性ソーダ水が下です。どちらも透明の液体です。

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泡立て器で混ぜ始めると不透明になりました。そして水と油の境がわからなくなりました。サラダドレッシングを作るときにちょっと似ていますね。サラダドレッシングのときはお塩で、石けん作りのときは苛性ソーダで水分と油分が混ざり合っていきます。

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しばらく混ぜているとシャバシャバしていた液がほんの少しだけとろんとしてきました。色も少しづつ白っぽくなってきています。水とオイルの層もなくなり、オイルと苛性ソーダ水はもう混ざったように見えます。しかし本当に混ざっているのでしょうか?ここで混ぜるのをやめ、石けん生地を3分ほどそのままおいてみます。

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3分たちました。見た目にはわかりにくいのですが、少しまた分離してきています。オイルの層が上に少しづ出てきているので、ボウルのふちの部分は色が濃く見えます。見慣れないと分離しているか見極めるのが難しいので、もっと簡単な方法を紹介しましょう。ゴムベラをボウルの壁に沿わせて矢印のように動かします。ボウルのふちに上がってきたオイルをゴムベラですくい集め、ボウルの真ん中へ放つようなイメージでやってみてください。

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透明で色の濃い筋が見えました。これは3分置いておいたときに徐々に分離して上にあがってきたオイルです。混ぜるのをやめると分離してきてしまうのがわかりました。最初は水とオイルではっきり二層になっていましたが、しばらく撹拌したあとは、白っぽく石けん生地になってきた部分と、オイルの部分とがあります。ここで型入れしてしまうと、部分的に石けんになってきたものと分離してしまったオイルがあり、うまく固まりません。オイルの筋ができたら、もっと混ぜていきましょう。

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ブレンダーを使ってみます。いきなりガガガーーーーと長くかけ続けるのではなく、脈を打つようなリズムでパス・パス、パスっと3回スイッチを押します。パスっていうのは私の言葉なのでイメージしにくいでしょうか。要は脈拍ほどに短いのを3回ですね。ここでブレンダーを静かに持ち上げて、生地を見てみます。ブレンダーを持ち上げた部分は撹拌された部分です。気泡が出ていないか確認もします。仮に気泡が入っていたとしても脈ほどの短時間なら、気泡だらけにはならずにすみます。気泡が入っているときは、パス・パス・パスという音が、ゴゴ・ゴゴ・ゴゴッと聞こえます。気泡が入っていないときは音も軽いです(私のブレンダーの場合)。

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2回目のパス・パス・パス。今度はより生地の色が白くなってきました。マーブル模様のようになっているのは、混ざっている部分と混ざっていない部分があるからです。短くブレンダーをかけたあとは、ムラを均一にするために泡立て器などで丁寧に混ぜます。こんなふうにブレンダーを少しづつ使うことで、たくさんの気泡ができたり急激な生地が変化するのを防ぐことができます。脈拍3回分程度の撹拌で、どれくらい生地が変化するか、1回づつしっかり確認しておくといいですよ。細かい生地の段階を見て覚えていくと、バタフライスワールはこれくらいのとろみ、ピーコックはこのくらいのとろみかな・・と少しづつデザインごとのタイミングもわかっていくと思います。

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トレースが出たか見てみます。ゴムベラを持ち上げると、生地がきれいに1本の線になりしたたっています。この線を使って字を書いてみましょう。

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何の字を書いたでしょう?最後のカーブの部分だけしか見えなくて、はじめに書いた線が消えてしまいました。これではわからないですね。もうしばらく撹拌を続けていきます。

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さらにとろみがついてきたところで、もう一度トレースチェック。今度は「の」の字がはっきりと残っているのが見えます。こんなふうに表面に線が残るくらいとろみがついたら、3分おいてもオイルが分離してくることはありません。むしろ3分おくとさらにとろみがしっかりとしてきます。だんだん固形石けんに近づいてきていますね。ここまできたらもう放っておいても石けんになってくれるので、型に流します。(デザインによってはもっととろみをつけることもあります。)

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こんなふうにコールドプロセスは混ぜて石けんを作っていきます。最初は二層に分かれていますが、少しづつまとまりが出てきます。混ぜ方が足りなければ、またオイルが分離してきます。表面に字が書けるほどとろみがついてくると、もう分離の心配はありません。あとはどんどん固まってくるので、型に流しておいておきます。少し温もりがあれば少し早くできあがります。でもどうせ4週間熟成させるなら、少しの差は大切ではないときもあります。最初に温度を合わせなくても、保温のときに温めればいいわけなので、最初にきっちり温度を合わせる必要もありません。ただ、何度でもいいと言うと初心者にはわかりにくいので、40度くらいで合わせるというような目安があった方が作りやすいとは思います。しかし数字に縛られてしまうと作りにくくなったり、うまくいかないこともあるので、マニュアル化するよりも柔軟に作れるように私は「お風呂くらい」という言葉をよく使います。

石けん作りの考え方やアプローチはひとそれぞれなので、これはあくまでも私の解釈です。今はブレンダーなど便利が道具ができたので撹拌がさくっと簡単にできてしまうのですが、だからこそ丁寧にする部分は丁寧に進めることをおすすめします。混ぜることで、または混ぜないことで少しづつ変わっていく生地の表情をぜひいろいろ見てみてください。おすすめです。