コールドプロセスよりのホットプロセス

ホットプロセスは熱で、コールドプロセスでは撹拌で主に鹸化反応を進めていくという話をしましたが、実際には熱と撹拌のどちらも活用して作る場合があります。例えば液体石けん。苛性カリを使ってホットプロセスで仕上げる方法が知られていますが、ブレンダーの撹拌を上手に取り入れるとホットプロセスの加熱時間が大幅に短縮できます。私は撹拌ー加熱ー撹拌という方法で液体石けん素地を作りますが、この方法だと30−40分で生地を作ることができます。

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はじめに
ボウルは深いものを選びましょう。画像は500gバッチで、ボウルは直径24cm、高さ(深さ15cm)を使っています。
ゴムベラは耐熱のもの、ブレンダーはブラウンを使用しています。
レシピは祥伝社の「お風呂で自然エステ」の中のさっぱり液体石けん(500gバッチ)を使いました。アルコールは使いません。

オリーブ 50g
ココナツオイル 400g
ひまし油 50g
精製水 250g
苛性カリ 124g

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苛性ソーダとオイルを合わせ、ブレンダーで撹拌します。苛性ソーダは作りたて、オイルも溶かした状態で熱いままでOKです。ブレンダーでの撹拌は1分くらい。パスパスパスと小刻みではなく、ウィーンと連続で1分です(ブラウンの場合)。シャバシャバした生地が飛び散ることがあるので、深いボウルで。エプロンもおすすめです。

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1分、撹拌した後。泡があって、乳白色になっています。混ざって石けんになってきているようなイメージですが、まだまだ全然混ざっていないんです。ここから湯煎にかけていきます。

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お湯の入った鍋の上にボウルを乗せ、蓋をします。蒸気をボウルの底にあてて生地を加熱するDBHP法と呼ばれるホットプロセスのアレンジです。火加減は弱火です。でも大事なのは火加減よりも蒸気の出方。お湯がぐつぐつして湯気がしゅんしゅんと出ていると強すぎ、お湯が静かで湯気が鍋とボウルの隙間から湯気がほとんど出ないときは弱すぎ、お湯がふつふつと湧いていて鍋とボウルの隙間から湯気が静かに上がってきているときがちょうどよい感じです。あくまでも我が家のコンロ+道具の設定でのことですから、自分のセッティングと火加減で生地がどのように変化するかを確認してみてください。

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10分、加熱してみました。透明の液体の中に白いもろもろ(石けん)があります。白いもろもろは主に底に沈んでいるので、耐熱のゴムベラなどで静かにすくいあげてみます。この時点では、もろもろは少しだけ。それ以外は液体です。

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さらに20分、加熱しました。透明の液体の底にある白いもろもろが増えています。ゴムベラですくいあげなくても見えますね。ここで加熱をやめます。

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ボウルを火から下ろしたらブレンダーで撹拌します。熱いので鍋つかみ(またはタオル)や鍋敷きなどを使いましょう。再び、ブレンダーでウィーンと混ぜていきます。あっという間にとろみがついてきます。熱もあるので、生地からほんのり湯気があがってくることもあります。撹拌は1、2分を目安に、生地の状態をチェックします。

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生地にとろみがついたら、静かにブレンダーを浮かせてみます。ブレンダーを抜いた部分の生地がつややかで濃厚なカスタードソースのようです。それ以外の部分(画像半分下)はちょっとざらざらと目の粗い感じです。このように生地の変化を目でしっかり確認しましょう。

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7のような生地の状態になると、早ければ数十秒くらいで生地が膨れ上がってきます。生地があふれ出てしまわないよう、必ず深いボウルを使ってくださいね。この膨らみ方はレシピやバッチサイズ、加熱状態、ブレンダーの種類などにより違いが出てきます。画像は500gバッチの生地ですが、ふわーっと膨らむのが怖いという方、または初めて液体石けん素地にチャレンジする方は、ハーフバッチ(250gバッチ)で作ることをおすすめします。私の経験だとハーフバッチは生地に熱があっても膨らむ力がないので、ほとんど膨らまないか、膨らんでもほんの少し&一瞬だけです。
また万が一、あふれ出してもよいように新聞紙を敷いておくとよいでしょう。

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生地が膨らんできたら、耐熱のゴムベラで生地を底からすくうような感じで混ぜていきます。そうすることでボウルの底に空気を入れて生地を冷まし、ふくらみを沈めていきます。このときは冷静に。慌てると危ないですよ。石けん作りはワクワクドキドキするものですが、それを楽しいものにするためには平常心がいちばんです。矛盾しているようですが冷静で落ち着いて作ることで、ワクワクドキドキがとても楽しいものになります。

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生地が落ち着いてしばらくすると透明になってきました。粗熱が取れたらできあがりです。加熱の仕方によっては白いままのときもあります。ジェル化の有無のような差なので使う分には問題ありません。

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このように最初だけでなく、最後の部分もブレンダーを使うと加熱時間を減らすことができます。500gバッチで30分ほど加熱しましたが、ハーフバッチなら20分くらいでもいいと思います。バッチサイズが小さいとブレンダーの撹拌での飛び散りが多いかもしれないので、バッチサイズを減らしてもボウルは深いものを使ってください。ピッチャーみたいなものでもいいでしょう。

**この記事は加熱と撹拌を組み合わせて作る方法として、主に教室の教室の受講者のみなさんを対象に書いています。これから初めて作ってみるという方は、この記事だけを頼りに作るのはおすすめしません。本やネットでしっかりリサーチしてから作るか、またはどこかのお教室でしっかりと体験しながら学ぶことをおすすめします。

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ひとつおまけ。加熱をしない液体石けん素地の作り方を紹介します。常温の素材で、撹拌のみで作ります。ココナツオイルがいちばん作りやすいので、まずはそれで試してみてください。

ココナツオイル 100g *液体&常温で準備(夏の溶けている状態)
苛性カリ 27g
精製水 50g

作り方はこちらを参考にどうぞ。